なぜワックスが必要か?

「ワックス=パラフィン=炭化水素(ハイドロカーボン)は水を弾く性質を持っているため、滑走面に塗る事により滑走中に発生した水分をより早く取り除いてくれる。」 と言う事になるが、その前に、なぜスキーの板は滑るかということに対する理解が必要となる。 

-重力の法則に従い板が滑っていくとスキー、スノーボードの滑走面が雪面と擦れあい摩擦がおき、熱エネルギーが生じる。 熱エネルギーは雪を溶かして雪の結晶は水滴となる。 

-水滴を捌くには滑走面に刻みいれるストラクチャーで解決されるが、如何に早く雪の結晶を水滴にするかにワックスが関わってくる。 水滴が滑走面に粘りついてしまう前に弾いてしまわなくてはならないからだ。

-水滴が滑走面に居座る形になると、いわゆる゛濡れ落ち葉亭主"状態。 滑走性を鈍らせる大元凶となってしまう。


ワックスの特質

効果的かつ効率良くさせるには、ワックスに下記の特性が無くてはならない。

・ 摩擦を減少させるための良い潤滑剤となる。
・ 塗りやすくかつ、ある程度の耐久性をもたらす為に滑走面との相性が良い。
・ 必要なときはすぐに除去できる。

ワックスの最も代表的なものは、容易に入手出来て低価格なハイドロカーボン(パラフィン)である。パラフィンは分子的構造上ポリエチレンに似ているため、滑走面への粘着が良く、またベースクリーナー(競技用ベースにはお奨めしない)か、ホットスクレーピングによって簡単に除去する事ができる。


板が滑らない理由 BIG 3

スキーが滑っている間には、キネティックエネルギーというエネルギーがおこっている。 そのエネルギーが発生すればするほど動きはより速くなる。 そのエネルギーの一部は、摩擦によって失われたり、熱に変わったり、スキーの振動で失ったりする。エネルギーは、また雪が圧縮されたり、スキーの動きで押しよけられた時にも消費される。 滑っているスキーには、ある一定のエネ
ルギー容量が決まっている。 ずらし、振動等によって消費されるエネルギーが少ないほど、キネティックエネルギーが保たれ、その結果としてスピードも保たれる。 エネルギーを妨げる最も大きなものは摩擦になるだろう。 これらの様に、摩擦の徹底解明もワックス開発の大きな部分となっている。

1 乾燥摩擦: 乾燥した雪の結晶が滑走面に突き刺さり擦れあって起きる摩擦
フッ素により一時的に乾燥しすぎた滑走面が摩擦する事も有り得る 
グラファイトも摩擦面を乾燥させる可能性があり、注意が必要

2 水分摩擦: 水滴が滑走面に張り付いた状態になると吸引効果をもたらす

3 静電気摩擦:滑走面やエッジと雪面により生じる静電気摩擦
塩分を含んだ雪湿によって生じる静電気もある
静電気は汚れを誘い込み、その汚れが摩擦の原因となる

板が滑らない理由 1:  乾燥摩擦 

乾燥摩擦: 乾燥した雪の結晶が滑走面に突き刺さり擦れあって起きる摩擦。

o 解決方法: ワックスの硬さを調合

雪の結晶がワックスに入り込むと滑走面が雪面をグリップしてしまう事から、ワックスは常に雪よりも少し硬めにする必要がある。 このワックスと雪の硬度釣合が、ワックス選択の中では最も大切な要素。  ではなぜ常に一番硬いワックスを塗らないのか?  硬度の釣り合いを保つワックス選択と、摩擦防止を求めるワックス選択は、互いに反発作用を起こすからだ。 ワックスは耐久性があり、雪結晶や汚れの浸透を阻止するだけの硬さが必要だが、硬いワックスは柔らかいものに比べて摩擦発生が大きい。 摩擦はできるだけ少ない方が好ましい為、雪よりも硬くかつできるだけ柔らかいものを選ぶことが大切となる。 雪温もワックス選択で無視出来ない。 冷温の雪は常に暖かい雪よりも固い為固めのワックスが必要となり、暖かい雪は結晶が鈍っている為柔らかいワックスの方が馴染みやすい。 通常は柔らかい雪は黄色いワックス、中間の固さはピンク、冷たい雪用は青色で、最も冷たい雪用ワックスは白色というのが一般的。 雪温に応じて雪の硬さを見極めこれらのワックスをミックスすることにより、ベースの硬さが雪の条件に最適になるのだ。 
必要以上のフッ素を使用すると、滑走面を一時的に乾燥させてしまい摩擦が生じる。 よって、高フッ素ほど早いという観念は捨てた方が良い。

滑走面と雪に生じる摩擦の最小化: 最先端の技術が適応される分野となるが、摩擦抵抗には、滑走面の原料選択、ストラクチャー、そして潤滑剤(ワックス)が必要となる。 滑走面の原料には、熱可塑性のポリエチレン(P-Tex)とよばれる合成樹脂が用いられているが、その理由として下記の要素が挙げられる。
・ 必要な温度範囲の中でもっとも伸縮性(破損しないという事)に富んでいる。
・ 水分を吸収しない。
・ ストラクチャーを入れこむ事が可能。
・ 修復が簡単。
・ 低コスト。

結論: 雪の結晶がワックスに突き刺さり、ワックスと雪の摩擦を増加させてしまうため、ワックスは常に雪よりも固めに設定する必要がある。 高速レースには、内部摩擦を低下させるために若干固めのワックスを選択する。 固いワックスは耐久性が良いが、遅く感じる。

板が滑らない理由 2 水分摩擦

水分摩擦: 水滴が滑走面に張り付いた状態になると吸引効果をもたらす摩擦
--水とは、46億年前から地球上に蔓延る物質であり、その総質量は46億年前と変らない!
-地球の 70%は水である。
-水分はお互いを引き付け合う能力を持つ、非常に怖い存在。 ストローの側面に張り付く水や、表面張力がその一例であるが、滑走面に張り付いた水も同じ様にへばりついて離れてくれない。 まるでストーカーである。

解決方法: フッ素使用
フッ素を使用することにより、溶かした水滴を丸くさせ、滑走面を転がすようにして捌いてしまうのであるが、フッ素は一時的な効果しかないため、パウダーを用いる時はその効力は長くても4時間程度しかない。 雪面をチェックし、水分が接地面に浮いてきている状態(雪面がテカっている状態)であればフッ素は必要である。 ワックスに配合されるフッ素は滑走面と雪面の摩擦で生じる水分を捌けるのに十分であるが、スタート後、加速されるまでの間雪に水が浮いている状態であればスタート用のフッ素パウダーを使用することにより、即時性がある。

結論: フッ素は、ハイドロカーボンワックスの防水加工剤であるが、内部摩擦をも引き起こすため、フッ素配合率は雪中の水分量によって調整する必要あり。 例を上げると、乾燥雪に高フッ素配合ワックスを使用すると、乾燥雪にはハイドロカーボンワックスが防水システムを必要としていない事と、フッ素による内部摩擦が増える分、速度を遅くさせる結果となる。 

板が滑らない理由 3 静電気

静電気摩擦: 滑走面やエッジと雪面により生じる静電気摩擦

1静電気は滑走面とエッジの起す摩擦係数を50%近く増加させる。
2静電気は汚れを誘引する。 
3静電気は雪質、湿度に関わらず発生する。
4静電気の値は加速度に比例し、増加する。
5グラファイトワックスはハイドロカーボンワックスに比べ静電気コントロールに有効である。
-ではなぜ常にグラファイトワックスを使用しないのか? 
グラファイトは静電気を減少させる役目を持つが、乾燥摩擦を高める可能性があり結果グラファイトを使用していない場合よりも摩擦が多くなる場合もある。

・新雪と古い雪は静電気の発生条件が異なり、使用する静電気防止作用物もそれに応じて変化させる必要がある。

・ある特定のグラファイトをミックス(グラファイトの形とサイズ)させた混合物が新雪に対する非常に有効な静電気防となる。 ((FGシリーズ))

・フルログラファイト・ポリマー(SRBシリーズ)は、固形潤滑剤としては非常に新しいグラファイトを直接フッ素配合させたものであるが、このコンビネーションが古い雪には最適である。

・適切な静電気防止作用物の使用は、常に不使用の場合よりも静電気を減少させる。 イコール好タイム、高スピードへとつながる。

・ 静電気防止ワックスは季節風の影響が大きい日本の雪にとっては非常に有効である。 日本の雪は塩分が非常に多く塩分は静電気を誘因する。

結論: 静電気はワックスの内部摩擦を増加させる為、全てのワックスに静電気を防止させる成分が含まれていなくてはならない。 残念ながらグラファイトは難しい成分なので、常に働くように組み合わせることは困難である為、ワックスメーカーのほとんどは静電気防止ワックスを製造していないか、製造してもどういう状況下で使用するか旨く説明できていないのが現状である。 


間違いの無いワックス選択の基準とは?

ワックス選択にはあらゆる方向から雪を判断する必要がある。 

1雪が新しいか古いかをチェック
−雪は3日間太陽(曇りも含む)に当たったかどうかで新しい、古いを判断する。
−日本の場合は雨も雪と同等に扱い、降水後3日目までは新しい雪となる。  

2雪の水分値をチェック
−基本的に手袋をつけたままの状態で雪球がすぐに作れれば湿雪、何度かこねても雪だまにならないものは乾燥雪

3雪の汚れ度をチェック
−雪に汚れが混ざっていればいるほど摩擦が多くなるためワックスを固くしなくてはならない。

4雪の結晶をチェック
−結晶をルーペでチェック。 角がどの位尖っているかをチェックする。

5全てをバーチャル・テクニシャンに委ねる
−http://www.dominatorwax−japan.Com/vframe.Html に必要事項を入れると、選択の必要なワックスをすべて打ち出してくれる。 日本の雪用にもプログラムされている。

6全てをクリスタルボールにゆだねる(第2章 クリスタルボールへ)